研究
X線やレーザーを用いて強相関電子系の秩序やダイナミクスを観測する研究を行っています。研究室紹介ポスター
X線による主な実験手法の1つは共鳴軟X線散乱です。概念図は下記の通りです。
X線を物質にあて、帰ってくるX線を観測するという大変シンプルな手法です。
共鳴軟X線散乱では、X線散乱を元素の吸収端を用いて行います。その意味で、X線吸収分光とX線散乱を足したような手法といえます。X線散乱を元素の吸収端を行うためには、X線のエネルギーが連続的に可変である必要があります。そのため、下記のようなシンクロトロン放射光施設を使います。
当研究室では主に国内のSPring-8やPhoton Factoryを使いますが、そのほかにも海外の放射光施設(アメリカ、カナダ、スイス、ドイツなど)も使用予定です。(リンクのページ参照。)SPring-8の東大物性研ビームラインBL07LSUでは下の左写真のような共鳴軟X線散乱装置を使っています。内部は右のようになっており、X線検出器としてPD(フォトダイオード)、MCP(マイクロチャンネルプレート)などが入っています。
現在および将来に対象とする物質は、遷移金属化合物、特に
・電荷/軌道/スピンの整列のある物質
・マルチフェロイック(磁性と強誘電が共存する)物質
・レーザー照射で磁化を制御できる強磁性物質
・リチウム電池の関連物質
などです。ほかに用いるX線の実験手法は
・硬X線散乱
・X線光電子分光
などです。
最近は実験室光源を用いた測定も多く行っています。下の左写真はPHAROSレーザー(1030 nm)を用いた時間分解透過率測定です。右写真はLEDやHe-Neレーザーなどを用いたカー顕微鏡です。
(参考書)
X線散乱・回折・反射については、X線の物理一般を含め、以下のような参考書があります。
D. Attwood, Soft X-rays and Extreme Ultraviolet Radiation: Principles and Applications (Cambridge University Press, New York, 2000).
J. Als-Nielsen and D. McMorrow, Elements of Modern X-Ray Physics (Wiley, New York, 2001).
桜井 健次[編]:X線反射率法入門 (講談社サイエンティフィック、2009年)
一番上のものは、David Attwood先生のホームページからエッセンスをダウンロードできます。
遷移金属化合物などの強相関電子系については、
M. Imada, A. Fujimori, and Y. Tokura: Metal-Insulator Transitions, Rev. Mod. Phys. 70 (1998) 1039.
津田惟雄、那須圭一郎、藤森 淳、白鳥紀一:電気伝導性酸化物(改訂版)(裳華房、 1993年)(英訳:N. Tsuda, K. Nasu, A. Fujimori and K. Siratori: Electronic Conduction in Oxides (Springer-Verlag, Berlin, 2000))
があります。